炭水化物好きとは、好感が持てますな。でも映画は、やっぱりテレビでやるとき観れればいいかな。
作家、奥田英朗の人気小説を基にした映画「ガール」(深川栄洋監督)が26日、TOHOシネマズ梅田ほかで公開される。女性たちが仕事や恋、家庭などの悩みを抱え、迷いながら、たくましく生きる姿を描いた群像劇。主役を演じたモデルで女優の香里奈が大阪市内でインタビューに応じ、「身近な関西」や役柄について語った。
■東京より大阪に親近感
愛知県名古屋市出身。金のシャチホコでおなじみの名古屋城や、豪華さで評判の結婚式。「名古屋嬢」と呼ばれる女性たちはゴージャスな太い縦巻きカールのロングヘアをなびかせる。そんな土地で生まれ育った香里奈は、関西に親近感を覚えているという。
「私、昔から、ハッキリした、バキッとした色合いが好きなんですよ。やっぱり名古屋人だから(笑)。洋服でも、どこかしら派手な部分が欲しいと思っちゃうんですよね」
色合いを「バキッと」と表現する時点で、すでに関西人に近いものが…。「大阪って、物事がハッキリしているイメージ。だから、過ごしていて気持ちがいい。自分を飾らなくていい場所だと思います」
地元の名古屋から大阪まで新幹線で1時間足らず。「距離が近いので、身近に感じていました。地元の友人たちも、進学は、東京より関西方面の学校に行く人が多かったんですよ」
■無類の炭水化物好き!
距離の近さは、文化の近さにも比例する。小学時代に過ごした日々も、関西人と似たものがある。無類の炭水化物好きで、「粉もん」は大好物という香里奈。「土曜日の授業は昼までで、学校から家に帰って来るでしょ。家族で、焼きそばやお好み焼きを食べながら、吉本新喜劇のテレビ番組を見ていましたからね」と笑う。関西のローカル番組がよく放送されており、自然とナニワになじみがあったようだ。
どんな話題にも、飾らずストレートに話す。そんなサバサバとした性格の香里奈だが、実は落ち込むと深いという。「感情の振り幅が大きいんですよね。落ち込むときはどん底まで行ってしまう。スパッと切り替えると、一切振り返らないんですけど」と苦笑い。
それゆえ、主演映画「ガール」で演じた大手広告代理店で働く29歳の独身女性の心情は共感することが多かったという。ということで、そろそろ映画の話へ。
■映画「ガール」 悩み抱え強く生きる主人公に共感
《由紀子(香里奈)と不動産会社勤務の聖子(麻生久美子)、文具メーカー勤めの容子(吉瀬美智子)、シングルマザーの孝子(板谷由夏)の4人は年齢を超えた親友。自立した彼女たちは、それぞれ女性ならではの悩みを抱えていた…》
主人公は、30歳を前にした「将来の不安」という漠然とした悩みを持つ。それは現在、28歳の香里奈に理解できる思いだった。「20代後半って、モヤモヤとした悩みを抱える時期なんです。同世代として、由紀子の焦燥感は分かりました」
微妙な感情表現を要求される難役。撮影前、深川監督からヒロインの感情の揺れに対し、「(作品の)前半は“動”、後半は“静”で」と言われた。撮影中はシーンごとに細かい指示を受けたが、深川監督の演出は独特だった。
「監督の指示は感覚的なんですよ。~みたいなとか、~のようなという比喩を多様していて、抽象的なんです。それを自分なりに解釈し、イメージを膨らませて演じました」。具体的な言葉でないがゆえに、想像力が研ぎ澄まされた。「まるで耳元で暗示され、監督の世界に引き込まれるような、不思議な感覚でした」。自宅で作り込んできた役柄を、現場で想像し直すのは初めて。女優として大きな経験となった。
ヒロインは「おしゃれは女性が手にした生きる力」と考えるほどのファッション好き。だが年相応のおしゃれではないと友人に指摘されてもいる。「彼女は、外見、内面とも夢見がちというか、ガーリー(少女のよう)な女性。まずファッションありきで、それから仕事や恋がある。彼女の個性とは、近い部分はなかったですね」
主人公は気分がめいるほどに、ファッションが派手になっていくが…。「それも私にはないです。キラキラしたものを見ると、気持ちが“あがる”のは事実ですけど(笑)。一旦落ち込んじゃうと、何も考えられないから」
■落ち込んだときもお腹は減る
そんな香里奈の立ち直り法とは。「悩んでいても、落ち込んでいても、おなかは減るから」。おいしい食事をし、2匹の愛犬と遊び、ゲームをする。極力、「別世界」に気持ちを持っていきつつ、自然に「ブルーな気分」が去るのを待つ。
「落ち込むことに飽きたら、気持ちをスパッと切り替える。沈んでたって明日は来るんだし。結局、やらなきゃいけないのは、自分だから」
いまの悩みのメーンは、やはり仕事。「正直、女性だから…といわれたくない部分はあります。精神的には対等でありたい。強くいないと気持ちが崩れちゃうところはあります」
今作中、麻生演じる役職を持った女性が、部下の男性の嫌みをその場は平常心でいなしながらも、誰もいない場所で泣き崩れるさまに共感を持った。「みんな悩んでいるのは一緒なんだなって。それでも毎日一生懸命生きる姿に、自分も頑張ろうって気持ちにさせてくれる、勇気をくれる映画です」と話した。
■モデルは憧れられる存在 女優は身近な存在
名古屋市のモデル事務所で活動後、18歳で上京。現在の所属事務所に移籍し、モデル業と並行して女優業も始めた。転機を問うと、「すべてです。環境の変化はもちろんですが、何もできていなかったのに、やっている気になっていた自分に気付いたことも、大きな転機」と返ってきた。自分に厳しい人だ。
彼女の軸となる、モデルと女優。それぞれ立ち位置が異なるという。モデルは憧れられる存在、逆に女優としては身近な存在でありたいと考える。「モデルは『香里奈ちゃんが着ている洋服、すてきだな、ほしいな』と思ってもらえないといけない。でも女優は、役柄に親近感を持ってもらう意味でも、近い存在に思ってほしい」。等身大の役柄を演じる今の持論だ。
“今”を生きることにこだわる。「その年代だからこそできることって、絶対にあると思う。だから、今しかできないことをたくさん経験したいんです」
そのためには、挑戦することを恐れない。モデルになる前は、歌手の安室奈美恵に憧れる“アムラー”だった。「厚底靴」や「ストレッチブーツ」を履き、自分が好きな流行のファッションを楽しんでいた。
■自分が美しく見えるファッションとは
おしゃれが“職業”となったとき、苦手な洋服を着なければならなくなった。実は、モデルになるまで、パンツスタイルになることは、ほぼなかった。自分のデニムのサイズも知らず、持っていなかったという。プロとなり、多くの洋服を着るうちに、自分が美しく見えるためにどのように「工夫」すればいいかが分かってきた。
「苦手なパンツでも、丈やライン、カット、色、バランスなどで、自分が格好見えるものがある。ポーズや姿勢でも変わる。自分はこうじゃなきゃ、という変なこだわりがなくなりました」。次第に、プライベートでも幅広いテイストの洋服を着こなすように。メークも、アイラインの入れ方、チークの位置、眉毛の書き方ひとつで、印象が大きく変わることを学んだ。
「いろいろ試すことで、自分自身の体形や顔立ちを詳しく知り、何が合うのかが分かる。だから試着ってすごく大事。面倒くさいかもしれないけど、タダだから(笑)。試して、新しい自分を発見をしてほしい」
■「30歳になるのもいいかな」
“挑戦”はおしゃれだけに留まらない。節目の30歳まであと2年。最近は、自分の枠を決めずに、積極的に新しいフィールドへ行き、引き出しを増やすよう心掛けている。
3人姉妹の末っ子。これまで年少者と接する機会は少なかったが、年下の女性と食事に行くように。彼女の悩みを聞くことで、世代ごとに持つ悩みは普遍と再確認した。「かつて私もそう思ってたな、と。違う世代の話を聞くことで、あらためて自分を振り返ることができるんだな、と思いました」
女性の先輩たちから、口をそろえて、こう言われていた。「香里奈ちゃんぐらいの年頃が、一番苦しかったな。もう2度と戻りたくない。年を重ねるごとに、自由で楽しくなるよ」。先人たちが明るい光を見せてくれる。「仕事も年齢に合ったものが来ると思うんですよ。役柄や洋服が。そのタイミングを大事にしたい。30歳になるのもいいかなって思います」
■ぶっちゃけ話 大阪での女性だけの試写会舞台あいさつで
映画「ガール」(26日公開)の試写会が大阪市北区のTOHOシネマズ梅田で開催され、主演の香里奈と深川栄洋(よしひろ)監督がサプライズで登場し、舞台あいさつを行った。
女性たちの本音がつまった今作にちなみ、試写会は女性限定。会場に集まった約450人の“ナニワガール”は、突然のゲスト登場に感動しきり。
愛知県名古屋市出身の香里奈は「実家にいたとき、大阪によく来ていました。今も道頓堀近くで“粉もん”を食べるのがお気に入り」と笑顔。「女性の気持ちをうまく表現した、リアリティーある作品。考えすぎずリラックスしてみてほしい」とアピールした。
一方、深川栄洋監督は、新作が完成すると、まず最初に大阪人の反応が気になると明かした。「大阪の記者さんやお客さんはとても鋭い意見をくださるので…」と苦笑い。特に女性に勢いを感じるそう。「地下街でも、女性の話し声が飛び交う。こんなにぎやかな町、ほかにないですね」
深川監督は今作を作り上げ、改めて「頑張っている女性は本当にかわいい」と感じたそう。「そんな女性の姿を男性にも見てもらいたいです」と話していた。
0 件のコメント:
コメントを投稿