2011年5月3日火曜日

「ポポポポ~ン」だけじゃない!ACジャパンCM名作列伝

印象的なCMが多いですね。営利を抜きにして作られるだけに、訴えるものが他と違うからでしょうか?

東日本大震災後のテレビで一時期、CMがACジャパン(旧公共広告機構)の「あいさつの魔法。」などの作品で埋め尽くされた。あまりの多さに視聴者からACに抗議が殺到したが、その一因として、ACの作品は社会的なテーマを視聴者に認識させるため、通常のCMより強いインパクトとメッセージ性を持っている点が挙げられる。今回は異様な集中放送のため反発も買ったが、ACの活動に問題があるわけではない。そこで、AC作品の魅力を知ってもらうべく、印象に残る過去のCM作品を、いくつか紹介したい。(岡本耕治)

 ■「人影なし(軍艦島)」(昭和57年)

 「島は宝島だった」というナレーションとともに、うち捨てられた軍艦島(長崎県・端島)の様子が映し出される。

 「石炭が見つかり、人々が集まった」「4000人もの暮らしがあった」と、かつての活況が語られるが、画面に写るのは無人の学校、荒れ果てた団地、止まった時計、体育館に転がるボール…という荒涼たる風景ばかり。

 そして、「資源とともに、島は死んだ」という衝撃的な言葉とともに、「私たちも資源のない島、日本に生きている」と、軍艦島は日本の縮図であることを示唆して終わる。ナレーションと映像の力で、資源の有効活用を強烈なインパクトで提示した秀作。

 ACC(日本シーエム制作連盟)CMフェスティバル秀作賞。

 ■「家庭排水・人魚」(平成4年)

 「今、海をいちばん汚しているのは、家庭からの排水です」というナレーションとともに、傾けた鍋から、茶色くにごった水が流し台に流れ落ちる。一瞬の無音とともに画面は変わり、金髪の美少女の人魚が笑顔で登場。そこに、上から轟音(ごうおん)とともに先ほどの汚水が降り注ぐ。汚れにまみれて泣きじゃくる人魚の姿は、何度見ても胸に突き刺さる。

 「台所から海を汚せるなら、台所から海を助けることもできるはずです」というナレーションが、重く心に響く。

 ACC賞、カンヌ国際広告映画祭ファイナリスト。

 ■「WATER MAN」(平成9年)

 「人間の70%は水です」というテロップとともに、ガラスのように透き通った身体に7割ほど水が満たされたCG(コンピューターグラフィックス)の「ウォーターマン」が登場。たぽん、たぽんと水音をさせながら歩くが、やけにぎくしゃくした動きが気になる。

 すると、見る間ににごり出す水。ウォーターマンの動きはますますおかしくなり、ひざをつき、がくがくとけいれんしながら、あえぎ出す。

 画面には「あなたが汚した水は、いつかあなたを汚すことになります」というテロップ。

 ナレーションは一切なし。映像の力だけで、水資源の大切さを視聴者に伝えることに成功した作品。

 国際広告賞グランプリ、ACC賞など。

 ■「人生を粉々にします。」(平成11年)

 覚醒剤撲滅運動の作品。

 白い粉でできたアリ地獄が映し出される。「アメージング・グレース」の歌声とともに、さらさらと粉は流れ落ちる。夜の街にいる女子高生のごく短いイメージを差し挟みながら、彼女のかばんが、携帯電話が、通学靴が、粉の中へと飲み込まれていく。

 シンプルで美しく、恐ろしい映像だ。最後に「覚醒剤は、あなたの人生を粉々にします」とナレーションがぽつんと入る。

 ACC賞、米IBAファイナリスト。

 ■「消える砂の像」(平成15年)

 これもナレーション一切なしで、地球温暖化の危機を訴えるシンプルで力強い一本。

 不協和音のような不吉な音楽が流れ、砂浜とビーチパラソル、そして砂で作られた寄り添う親子像が映し出される。

 「温暖化の影響で、日本の砂浜の8割が消えると言われている」というテロップ。波が少しずつ満ちていき、やがて、親子像がゆっくりと崩れ落ちる。

 一拍おいて、「消えるのは、砂浜だけじゃない」というテロップが浮かぶ。

 米IBA最高賞、ロンドン国際広告デザイン賞ファイナリスト、ACCファイナリスト。

【ACジャパン】

 「企業が少しずつお金を出し合い、世の中のためになるメッセージを、広告という形で発信しよう」という考えのもと、一般企業やマスコミ、広告代理店が集まって設立した団体。

 制作したCMは、会員が無料で独自判断によって放送する。今回は、震災の影響で予定されたCMの放送を自粛するスポンサーが相次いだため、その空白を埋める目的でACジャパンのCMが大量に使用された。

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