2012年6月16日土曜日

<テルマエ・ロマエ>興収50億円突破の大ヒット 製作の裏側をプロデューサーに聞く

意表つきすぎ!wアニメしか見たことなかったけども、映画も観たくなってしまった。


 俳優の阿部寛さんが古代ローマ人を演じた映画「テルマエ・ロマエ」(武内英樹監督)が興行収入50億円を突破する大ヒットとなっている。邦画が興行収入50億円を突破するのは、10年の映画「THE LAST MESSAGE 海猿」以来だ。またイタリアでの公開決定を皮切りに、世界20以上の国・地域から公開のオファーが殺到中だ。阿部さんは「多くの方に愛される作品になったということが、本当にうれしい」と喜んでいる。企画段階で興収10億円を下回るという指摘もあった中、ヒットを確信していたという同作を手がけたフジテレビの稲葉直人プロデューサー(34)に舞台裏を聞いた。(毎日新聞デジタル)


 映画はヤマザキマリさんのベストセラーマンガが原作。古代ローマ帝国の浴場設計技師が、現代日本の銭湯にタイムスリップし、新たな発見を次々とローマの風呂づくりに生かしていく……というストーリーだ。主人公のルシウス役の阿部寛さんをはじめ、市村正親さん、北村一輝さん、宍戸開さん、勝矢さんら日本人俳優が「古代ローマ人」を演じた。

 稲葉プロデューサーが原作を手にしたのは、10年の正月。書店で立ち読みし、すぐに「主人公は日本人が演じる方が面白い。阿部さんだったら顔が濃いし……」とひらめき、「メーンのローマ人は日本人で、顔が濃くて重厚な演技派の人にしよう。笑えるし、ワクワクできるし、期待できる」と市村さんらの顔も次々に浮かんだ。

 ルシウスの「きまじめだけど端から見ると笑ってしまうキャラクターが、阿部さんにどんぴしゃり。どんなハリウッド俳優や、人気のお笑い芸人が演じても阿部さんには絶対勝てない」と、企画書と原作のみで阿部さんにオファー。古代ローマ人役で、かつ風呂を中心にした物語の都合上、約8割が裸のシーンだったため「断られるだろうと思っていた」というが、阿部さんは即快諾。思い描いていたキャスト全員の出演が決まり、とくに古代ローマ人役は「ベスト5です」と胸を張る。

 一方、ルシウスに「平たい顔族」と呼ばれる日本人の老人役の出演者もインパクト十分だ。こちらは80歳代を中心にした約100人からオーディションで選んだ。オーディションでは、ルシウスが初めて出会う老人役のいか八朗さんから「『君に言いたいことがある! 歩きなさい』って説教されたりして、まったくコミュニケーションが取れなかった」と苦笑いで振り返る。「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」(日本テレビ系)に“ピカデリー梅田”として準レギュラー出演している菅登未男(すが・とみお)さんも出演している。

 稲葉プロデューサーは「すべてギャップだと思った」と繰り返す。「キャスティング、芝居、舞台設定も大まじめにやればやるほど面白くなって、笑いを超越するワクワク感が出る。それが企画の根幹」といい、特に古代ローマの大仰さ、壮大さと日本のミニマムな世界観の対比は「切り捨てたら映画化する意味がない」と考えていた。

 そんな時、古代ローマを再現したオープンセットがイタリアのチネチッタにあると聞き、撮影を決めた。米国HBOと英国BBCが共同制作した連続ドラマ「ローマ」のために作られたもので、映画冒頭などで使われている。「阿部さんが“仮装大賞”に見えたら負け。どこまでまじめにローマの世界観を構築して、ローマ人として阿部さんがいるか。そこさえクリアできれば」とこだわった。

 「奇跡的にオープンセットがあり、キャストから出演を断られなかった。阿部さんがやってくれると言った瞬間、いけるなと思った」という稲葉プロデューサーが想定した最終興行収入は30億円。しかし周囲の評価は低く、10億円を下回るという指摘もあった。それが今や50億円突破の大ヒットだ。

 その理由を「何も考えず、明るく楽しめて、ちょっといい気持ちで帰れる。それが閉塞(へいそく)感のある時代と合っていた」と分析。さらに「どこかで見たような企画、旬の人を集めた同じようなキャスティングの映画が並べられていて、企画的な閉塞感が映画ファンにはあったと思う。誰かが出ているからヒットするわけではない」と持論を掲げ、「テルマエ・ロマエ」には「なんだこれ? と感じる企画と珍しいキャスティング、演出、世界観の化学反応式がうまく伝わり、爆発力を生んだ」と胸を張る。

 海外進出は想定外だったが、イタリアでのプレミア上映と映画祭出品で高評価を得て、正式公開が決定。ほかにモナコ、マルタ、バチカン市国などでの上映が決定し、フランス、ベルギー、ドイツ、英国、トルコ、米国、韓国、中国、シンガポールなどからオファーを受けている。物語には、古代ローマの風呂文化の一端が現代の日本から作られたという壮大なギャグが根底にあるものの、これまでの上映で「どこからも苦情はなかった」という。“日本製ローマ映画”が世界でも受けるか、注目だ。

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