今になって、こういったことを告白できるなんて、しっかりした人なんだろうなあ。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2011で9日、「山形映画人列伝」と称して山形出身の女優・横山リエの代表作『新宿泥棒日記』(大島渚監督、1969年製作)と『天使の恍惚』(若松孝二監督、1972製作)の上映が行われた。上映後には横山のトークショーも行われ、今だから話せるぶっちゃけ話に会場が沸いた。
横山は高卒後に上京し、OLを経て劇団青俳の研究所に所属。劇団仲間と酒場で演劇論を戦わせていたところに映画プロデューサーから声をかけられ、オーディションの結果『新宿泥棒日記』でデビューした。クールな顔立ちから『女囚701号さそり』(1972製作)や『遠雷』(1981製作)などで、粋で尖ったオンナを演じてファンを魅了してきたが、現在は東京・新宿でバーを経営している。
しかし日本ヌーベルバーグのヒロインと謳われた横山のコケティッシュな魅力は相変わらず。この日もいきなり、今回上映する2作について「2本ともキライなの」とあっけらかんを言い放った。
それには理由がある。『新宿泥棒日記』はデビュー作でいきなりヌードシーンがあり「恥ずかしいから、ほとんど映像を観てない」という。加えてそのヌードシーンでは胸に傷があることを岡ノ上鳥男と名のる青年役の横尾忠則から指摘されるのだが、その時返す横山のセリフはアドリブで実体験を語っているのだという。横山は「これは今だからもう話すけど……」と前置きした上で、「実は上京してすぐに通り魔に背中から刺されて死ぬ寸前だったんです。だから本当に体に傷が残っているし、自分の中でトラウマみたいになっちゃったの」と告白し、会場にいた同級生も驚きの声をあげていた。
『天使の恍惚』の「イヤな想い出」(横山)も衝撃的だ。革命組織のメンバーを演じた横山は劇中、爆弾を持って新宿・伊勢丹前を走るシーンを撮影した。その数日後の1971年12月24日、東京・警視庁四谷署追分派出所付近で時限爆弾が爆発する「新宿クリスマスツリー爆弾事件」が起こったのだ。警察の聞き込み捜査から「横山を見た」という目撃情報が上がり、横山は四谷署の取り調べを受ける事態へと発展したのだという。横山は「ちょうどNHKで時代劇『天下御免』の仕事が入ってた時だったから、犯人扱いされて出演が出来なくなるんじゃないかと思って心配で。若松監督がフォローしてくれたら良かったんだけど全部私が対応して、本当に憤慨したの」と積年の恨みを吐き出した。
その後も横山の“口撃“は止まず、「『新宿泥棒日記』は難解な作品でしょ? 眠くならなかった?」と、振られた観客の方が返事に困る発言を連発していた。しかし、間違いなく今回上映した2本は横山の代表作だ。特に海外や若い世代が両監督作を再評価しはじめていることもあり、横山の新たなファンも増えているという。横山は「若い子と話していると『1970年代が好き』と言う子が結構いるのよね。確かにあの時代は、日本をイキイキさせた時代だと思うの。わたしもあの時代が一番面白かった」と当時を懐かしがっていた。
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